日本間質性膀胱炎研究会

間質性膀胱炎について

間質性膀胱炎―疾患の概要

1.要約

 間質性膀胱炎とは、「膀胱の非特異的な慢性炎症を伴い、頻尿・尿意亢進・尿意切迫感・膀胱痛などの症状を呈する疾患」(間質性膀胱炎診療ガイドラインによる)である。中高齢の女性に多いが、男性や小児にもみられる。原因は不明で、膀胱粘膜の機能障害や免疫学的機序が想定されている。頻回な排尿や膀胱の痛みによる苦痛から生活の質は大きく損なわれる。確立した治療法はなく、対症的な治療に留まる。再燃と寛解を繰り返し長期にわたる医学管理が必要となる。

2.原因

 原因は不明であるが、膀胱粘膜の機能障害、免疫学的な異常反応、尿中の毒性物質、疼痛に対する過敏性などが想定されている。

3.症状

 症状は、頻尿・夜間頻尿、尿意亢進、残尿感、膀胱不快感、膀胱痛などが主体である。その種類や程度は多岐にわたるので、症状の特定や程度の規定はできない。膀胱の不快感や痛みは膀胱に尿がたまった時や冷えた時のほか、刺激物の摂取や精神的なストレスでも悪化する。痛みの部位は膀胱・尿道が多いが、膣・外陰部・腰部などにも波及することもある。時に、線維筋痛症、シェーグレン症候群、過敏性腸症候群などを合併する。日常生活には多大の障害が生じる。

4.診断・重症度基準

 診断基準として国際的に認知されたものはない。わが国および東アジアの診療ガイドラインでは、症状、膀胱鏡所見、他の類似疾患の否定の3要件を診断基準としている。診断要件の膀胱鏡所見とは、ハンナ病変(正常の毛細血管構造を欠く特有の発赤粘膜)または膀胱水圧拡張後の点状出血である(詳細は「間質性膀胱炎の診断基準」を参照)。
 重症度基準も一般的なものはない。日本間質性膀胱炎研究会よりは、膀胱痛の程度と最大一回排尿量を用いた基準が提唱されている(詳細は「間質性膀胱炎の重症度基準」を参照)。

5.治療法

 対症療法としては、病態説明や食事指導が用いられる。内服治療薬としては、鎮痛薬、抗うつ薬、抗アレルギー薬、免疫抑制剤などが用いられる。内視鏡的な治療としては、膀胱水圧拡張術が広く用いられる。その際に膀胱内にハンナ病変を認めた場合は、その電気またはレーザーによる焼灼術も行なわれる。膀胱内への薬物注入治療として、ヘパリン、DMSO、ステロイドなどが用いられる。ボツリヌス毒素の膀胱壁内注入も行なわれることがある。いずれの治療にも抵抗性で症状が強い症例に対しては、膀胱全摘術と尿路変更術が行なわれる。

6.予後

 膀胱水圧拡張術またはハンナ病変の焼灼術により、約半数の症例で症状の寛解をみる。しかし、長期的に寛解するのは一部の症例に限られ、多くの症例では、再治療や追加治療が必要となる。これらの治療にも拘らず耐えがたい症状が持続する症例は膀胱全摘術が適応となる。

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間質性膀胱炎の診断基準(診療ガイドラインから抜粋・一部改変)

 診断基準として国際的に共通したものはない。以下に示すNIDDK(National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases)の基準は、疾患を定義づけるためではなく、臨床研究に適合する患者特性として作成されたものである。従って、より厳格であり、臨床的な実感とも乖離している。一方、米国の症例集積研究(Interstitial Cystitis Data Base; ICDB)の基準では、症状だけで膀胱鏡所見を必要としていない。

NIDDKの診断基準の抜粋
診断項目:ハンナ病変か広範な点状出血 かつ 膀胱痛か尿意切迫感
除外項目:18歳未満、膀胱内圧検査(膀胱容量350 mL 以上・150 mL 以下でも強い尿意を感じない・不随意収縮)、罹病9ヵ月未満、夜間排尿1回未満、昼間排尿8回未満、下部尿路の感染(3ヵ月以内)、類似症状を呈する疾患

 これに対して、わが国の診療ガイドラインでは、以下の3点を診断基準としている。これはNIDDKの診断項目を尊重しつつ症状を膀胱痛と尿意切迫感に限定せず、あわせて除外項目も簡潔にしたものである。

① 頻尿、尿意亢進、尿意切迫感、膀胱不快感、膀胱痛などの症状がある
② 膀胱内にハンナ病変または膀胱拡張術後の点状出血を認める
③ 上記の症状や所見を説明できる他の疾患や状態がない

 症状には、頻尿、夜間頻尿、尿意亢進、残尿感、尿意切迫感、膀胱不快感、膀胱痛などがある。その種類や程度は多岐にわたるので、症状の特定や程度の規定はできない。
 ハンナ病変とは、正常の毛細血管構造を欠く特有の発赤粘膜である。病理学的には、上皮はしばしば剥離し(糜爛)、粘膜下組織には血管の増生と炎症細胞の集簇がみられる。ハンナ病変はハンナ潰瘍とか単に潰瘍と称されることもある。膀胱拡張術後の点状出血とは、膀胱を約80cm水柱圧で拡張し、その後に内容液を排出する際に見られる膀胱粘膜からの点状の出血である。
 類似の症状を呈する疾患や状態は多数あるので、それらを鑑別する。例えば、過活動膀胱、膀胱癌、細菌性膀胱炎、放射線性膀胱炎、結核性膀胱炎、薬剤性膀胱炎、膀胱結石、前立腺肥大症、前立腺癌、前立腺炎、尿道狭窄、尿道憩室、尿道炎、下部尿管結石、子宮内膜症、膣炎、神経性頻尿、多尿などである。
 膀胱鏡所見に基づいて間質性膀胱炎は以下の2つの病型に分類される。

① ハンナ型間質性膀胱炎:ハンナ病変を有するもの
② 非ハンナ型間質性膀胱炎:ハンナ病変はないが膀胱拡張術時の点状出血を有するもの

 ①の患者の方が高齢で症状も重症で、病理学な炎症所見が強い。治療方法も異なるので、この2者の鑑別は重要である。

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間質性膀胱炎の重症度基準

重症度基準として一般的なものはない。また、診療ガイドラインでも提唱されていない。そこで、本研究会の幹事および評議員による意見交換を経て以下の重症度分類を提示する。

日本間質性膀胱炎研究会作成の重症度基準

重症度 基 準
重症 膀胱痛の程度*が7点から10点 かつ
排尿記録による最大一回排尿量が100ml以下
中等症 重症と軽症以外
軽症 膀胱痛の程度*が0点から3点 かつ
排尿記録による最大一回排尿量が200ml以上

*膀胱痛の程度(0-10点)の質問

膀胱の痛みについて、「全くない」を0、想像できる最大の強さを10としたとき、
平均した強さに最もよくあてはまるものを1つだけ選んで、その数字に○を付けてください
0  1  2  3  4  5  6  7  8  9  10

解説

1. 一般に重症度は患者の困窮度を基本として定めるべきである。ただし、患者の主観だけに依存するのではなく何らかの客観的指標も組み合わせた基準が望ましい。この基本的姿勢に基づき、症状項目としては膀胱痛を、客観的指標としては排尿記録による一回排尿量を採用した。
2. 痛み以外の症状に関しては、頻尿も確かに困窮するが痛みに比べれば軽いと思われた。また、思い出しによる排尿回数は不正確である、排尿回数は水分摂取量の影響を受ける(改善すると水分を取るので排尿回数は減らない)、などの問題もあった。
3. 複数の症状を組み合わせた症状スコア(O’Leary and Sant’s Symptom Indexなど)の採用も考慮した。しかし、それが間質性膀胱炎の全体の症状を正確に反映しているか疑問がある、症状の程度でなく頻度を聞いている、過活動膀胱の特異的症状とされる尿意切迫感を聞いている、などの問題があった。
4. 痛みの評価方法としては、Numerical Rating Scale(0-10)による膀胱痛の程度の評価がもっとも広く用いられており適当と思われた。スコアは0から10の全体で11段階であるが、これを大まかに、0-3の4段階、4-6の3段階、7-10の4段階の3つに分類したところ、臨床的な実感とも一致した。
5. 排尿記録による一回排尿量については、その平均値か最大値かは一長一短があった。平均値は計算の手間がかかる、一日通して排尿の度に排尿量を測定する中で1度でも測定できないと不正確になる、などの問題があった。最大値は例外的に大きい値があった場合に実態を反映しない危険があった。しかし、最大値を採用する意見が多かった。
6. 最大値の閾値については、使いやすさから100mlと200mlが提案された。確かに、重症を50ml以下とするのは厳しすぎる、軽症を300ml以上とするのは緩すぎる、150mlや250mlを推奨する理由も明確でない、などから100mlと200mlが採用された。
7. なお、内視鏡所見(特にハンナ病変)を重症度の評価項目とすべきという意見もあった。確かにハンナ病変の有無は治療方針の決定には重要である。しかし、ハンナ病変がなくても重症の症例はいる、ハンナ型でも軽快する例もあって全てが重症に相当しない、重症度の評価の度に内視鏡検査が必要となる、などの問題があった。以上から、病型と重症度は別であると考え、重症度の項目とはしなかった。
8. 基準はその適正さを随時見直し、必要に応じて修正される可能性がある。

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